「何が食べたい?」と聞かれて、つい「何でもいいよ」と答えてしまう。
本当は「お寿司がいいな」と思っていても、「相手の食べたいものに合わせよう」と、無意識のうちに自分を後回しにしてしまうことはありませんか?
それが一度や二度ではなく、いつの間にか当たり前になっている方も少なくありません。
お相手を思いやるその優しさは、とても素晴らしいものです。
ただ、その心の奥には、もしかしたら「嫌われたくない」「がっかりさせたくない」「自分が合わせるのが一番丸く収まる」といった不安や気遣いが隠れているのかもしれません。
こうして相手を優先し続けるうちに、心には不思議な変化が起こり始めます。
自分でも、自分の本音が分からなくなってしまうのです。
「私は、本当は何が食べたいんだろう」 「どこへ行きたいんだろう」 「どうしたいんだろう」
決して、自分というものがないわけではありません。
ただ、「私はどうしたい?」と問いかける前に、「相手はどう思うか」を先に考えることが癖になっているだけなのだと思います。
だからこそ、急に「本音を聞かせて」と言われても、すぐに言葉が出てこなくて当然です。
そんな時は、「まだよく分からないな」という言葉も、今のあなたの大切な本音。
「ちゃんとした答えを返さなきゃ」と身構えてしまう必要はありません。
会話にテストのような「正解」は存在しないからです。
会話とは、お互いのことを少しずつ知りながら、一緒に心地よい答えを探していくプロセスそのものです。
無理に結論を出そうとしなくても大丈夫。
その瞬間に心に浮かんだ言葉を、そのままお相手に伝えてみてください。
「ちょっと考えてもいい?」 「今、こんなふうに感じているんだ」 「まだ迷っていて」
そんな短い一言だけで、お互いの心が通い合うきっかけは十分に作れます。
また、相手の話を聞いた時も、無理に分かったふりをする必要はありません。
「そっか、私にはちょっと想像がつかないな」 「私はそうは思わないかもしれない」
そう伝えたからといって、二人の関係がすぐに壊れてしまうわけではありません。
むしろそこから、 「どうしてそう思ったの?」 「そんな経験があったんだね」 「もう少し詳しく聞かせてほしいな」 といった、さらに深い対話が生まれることもあります。
相手を知るということは、自分の意見を相手に合わせることではありません。
お相手がどんなことを大切にし、どんな経験をして、どんな思いでその言葉を口にしたのか。
その背景にあるその人自身を、少しずつ紐解いていくことです。
そして同時に、お相手もまた、あなたのことを知っていきます。
会話というキャッチボールは、一人では成り立ちません。
あなたが投げた言葉を相手が受け止め、また投げ返してくれる。
そのやり取りを重ねる中で、「ここは私が譲れる」「ここは相手が受け入れてくれた」という心地よさを感じることができます。
親密な関係を築くということは、どちらか一方が我慢し続けることではありません。
お互いの「違い」を認め合い、尊重しながら、二人にとって一番心地よい距離感を一緒に育てていくこと。
お相手を大切にするのと同じくらい、自分の気持ちも大切にしてあげてくださいね。